カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 桃山時代を代表し、我国の水墨画の最高傑作とも言われる長谷川等伯の国宝『松林図屏風』(東京国立博物館所蔵-しかし京都のお寺などではなく、どうしてここにあるのか不思議ですね)。

 一昨年でしたか、上野の国立博物館で開催された『巨匠対決』展(含む狩野永徳vs.長谷川等伯)の中でも一番見たかった展示品でしたが、行った時は残念ながら期間中の入れ替えの後で見ることが出来ませんでした。

 今回、同じく上野で、長谷川等伯没後400年の特別展(東京の後京都へ巡回)として、他の作品と一緒に『松林図屏風』も展示されるとのことで、生涯に亘る80作品もが一堂に会する機会は今後もう無いだろうと言われる特別展です。
たまたま東京に私用で行く機会と重なったことから「今度こそ!」と何とか時間を作って、一度振られた恋人にでも合うような気持ちでいそいそと上野に向かいました。 

 国立博物館に着くと、私同様“恋人に振られた”人が多かったのか、また特別展最終日の前々日ということもあるのか、30分待ち。思ったほどではありませんでしたが、松林図初め、重要文化財『枯木猿候図』(京都龍泉庵)や狩野永徳に比肩されると言う金碧障壁画の国宝『楓図壁貼付』(京都智積院)など目玉の作品前では黒山の人だかりで、じっくりと観賞することはできませんでしたが、とにかく教科書や歴史年表で見た“本物”が目の前にある感動と幸福感で一杯でした。

 特に念願叶った松林図は、見ていると次第に絵の中に吸い込まれて、そしてどこからともなく風の音や何か音楽(平家琵琶か笙の笛とでも言いたいところですが何故かその時に自分の脳裏に聴こえてきたのはエンヤでした)が聞こえてくるような、そんな不思議な感覚に包まれていきます。しかも、言い古されていますが、確かに何も描かれていない余白が、透明な筆で描かれたかの如き意志を持って能弁に主張しています。また、猿候図はその生き生きとした様子で今にも動き出しそうです。やっぱり等伯は水墨画が凄いの一言です。

 さて、見終わってからいつものように考古館へ。
ここにも教科書に載っているような国宝、重文を含む、土器や土偶、埴輪、そして矛や銅鐸などの青銅器が所狭しと並べられていて、正に圧巻。特別展の時は見学する人もまばらで思う存分に眺められるため超穴場。
元“考古少年”は「スゴイなぁ!」と独り言のように連発し、何度も溜息をつきながら古代日本に思いを馳せて、その文化の豊かさを実感したのでありました。