カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 今年も“大バッハと過ごす至福の時”と銘打って、2007年に市制100周年を記念して結成された古楽器アンサンブルである、松本バッハ祝祭アンサンブルの第4回公演が2月11日に行われました。しかも、今年は大作「ロ短調ミサ曲」の全曲演奏会です。

 それに先立って、今回も地元松本出身の(高校音楽部の大先輩でもある)国立音大(定年で退官され現在は)招聘教授の磯山雅先生の講演会が、1月26日にハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)で、「バッハのロ短調ミサ曲~何を聴くか、どう聴くか」と題して開催され、事前勉強のために聞きに行って来ました。因みに演奏会チケット(メイト価格5000円、一般6000円)で講演会と演奏会両方に入場出来ます(講演会は全席自由)。
 今回奥様は別件があり、止む無く一人で出掛けました。せっかくの機会なのに700席の大ホールは三分の一程度しか埋まっておらず、チョッピリ寂しい講演会でしたが、個人的には聞きに行って大正解。2月11日のロ短調ミサ全曲演奏会を、より深く理解した上で聴くことが出来ました。

 ステージ上のスクリーンに資料を投射しながらの説明の中で、十字架音形、溜息の音形、嘆きの低音、降臨を象徴する下降音形など、バッハが初めて作曲したカトリック音楽であるミサ曲へ織り込んだ様々な工夫を初めて知ることが出来ました(因みに、磯山先生は、元々音大ではなく東大の文学部美学科出身ですので、楽器演奏を専攻された訳ではありませんが、講演中に特徴ある旋律をご自身でピアニカを吹かれて説明されていました)。
1733年、カトリック教国であるポーランド国王兼任を機にルター派からカトリックへ改宗したザクセン選帝侯に献じた第一部(キリエ、グローリア)から15年後。1748年に作曲を再開し、クレド(ニカイア信条)、サンクトゥスから、独立させた終曲ドナ・ノビス・パーチェムまでを、死の半年前までの2年がかりで病魔と戦いながら完成させたのは、単なるカトリック典礼音楽作曲に留まらず、当時盛んに行われたカトリックとプロテスタントの神学論争の対立を超越した「人類普遍の平和」を晩年の大バッハは求めたのではないか、という磯山先生の説に深く感銘を受けました。
 冒頭の重要な4小節というキリエの部分を、世界初録音から始まり、カール・リヒターの名盤、大規模編成でのジュリーニ盤、近年の古楽演奏などに混じり、全パートをソロで演奏する“リフキン方式”の元となったというリフキン盤など、6枚の比較試聴もあり、大変興味深い内容でした(写真は、開始前のステージの様子と真面目にしっかりメモ書きした当日配布資料で、演奏会にも持参)。
ただ、「松本バッハの会」では6回シリーズで行ったという「ロ短調ミサ」の解説を、エッセンスのみとはいえ僅か2時間で終わらせようと言うのはどだい無理というもの。終盤はかなり割愛しながらも、結局40分近く延長されて漸く終了しましたが、郷土出身の先生のお話を、皆さん殆ど最後まで席を立たずに熱心に聴講されていたのが印象的でした。私自身も、今まで近寄りがたかったバッハの宗教曲をチョッピリ身近に感じことが出来ましたので、本番の演奏が大いに楽しみになりました。

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