カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 7月11日の土曜日に、軽井沢大賀ホールで開催された「小菅優ピアノリサイタル」。
以前NHK-FMで流れた彼女の内省的な演奏に惹かれ、その後偶然家内の実家のある茅野市民会館でのコンサートを2年前に聴くことが出来(第788話)、彼女の生の演奏(その後でサインをいただいた際の人柄も)に触れて一層感激し、(メジューエワさん同様に)“隠れ”ファンになりました。
その彼女が今度は軽井沢で演奏すると知り、幸いマチネでもあったので、足を延ばして(松本からは、車で約2時間の行程ですが)聴きに行くことにしました(奥さまには、+アウトレットでのショッピングで勧誘)。

 アウトレット(軽井沢プリンスショッピングプラザ)は増床されて店舗数が増え、北陸新幹線の金沢延伸効果もあってお客さんが増えているそうなので、10時の開店時間を目標に出発。高速の方が運転が楽なので、今回も途中で降りずに碓氷軽井沢ICで降りて少し戻るコース。道路は余り混んでおらず、1時間40分ほどで到着。以前来た時に比べると、駐車場が増えたこともあるのか、周辺は渋滞も無くスンナリと(ショップ近くに)停めることが出来ました。3時間ほどのショッピング時間で、奥さまは悩んだ末に結局買い物をされたので、駐車場が終日無料になりました(損得勘定は不明ですが)。その後、新設されたフードコートで昼食。チョイスが増え、各々気に入ったモノが手軽に食べられるので便利です。
また、以前は建物の間にあった、元ゴルフ場の広大な芝生エリアに新しい建物が立ちましたが、思いの外芝生エリアも残されていたので、お子様連れや犬連れのお客さんも、女性陣が買い物をしている間に、以前同様(することの無い人は)時間を過ごせそうです。なお、エリア内に数店あるペットショップで、時間単位で犬を一時預かりしてくれるのですが、事前に確認したところ、予約不可で空いていればOKとのこと。万が一コンサート時間に一杯だったら、炎天下の車中に置いては行けないので、今回は連れて行くのを諦めたのですが、店で聞いたところ、お盆やGWなどを除けば満杯になることはないとのことでしたので、次回はナナを連れて行こうかと思います。

 さて、初めての大賀ホールは、旧軽方面への駅北口から徒歩7分とのこと。
矢ヶ崎池の畔に立つ五角形の木造ホールで、浅間山をホールの背景に望みながら池の畔を回るように歩いて行きます。ちょうど蓮の花の季節を迎えているようでした。
松本のハーモニーホールは、北アルプスを背景にヒマラヤスギに囲まれたヨーロッパの教会の尖塔の様な趣がありますが、大賀ホールも如何にも高原の風情を感じますので、ここもマチネの方が印象が良いかもしれません。
こちらは、軽井沢で病気療養をしていた故大賀典雄氏が、町に音楽専用ホールが無いことを知り、SONYからの退職金の(手取り)全額を寄付し建設されたホールです。どの席で聴いても音が均一に聞こえるようにと、音響の理想を求めたという5角形サラウンド型。その形もですが、信州らしい木造故の柔らかで暖かな響きのする800席弱のホールです(「若者に安価で良質な音楽を」という大賀さんの要望で、ステージ後方の二階に立見席が設けられています)。
 「物語と詩」をテーマに選曲されたというこの日のプログラムは、前半にベートーヴェンの第8番「悲愴」とプロコフィエフ「バレエ音楽ロメオとジュリエットからの10の小品」から5曲を抜粋。休憩を挟んだ後半に、ショパンのバラード全曲(4曲)という構成。
300席に満たない茅野市民館ではベーゼンドルファーでしたが、800席弱の大賀ホールはスタインウェイ。2年前の茅野でのリサイタルで「悲愴」と「熱情」、シューマン「幻想曲」を弾いた時に引き続き、小菅さんの悲愴は二度目です。また、2011年にはブルーノ・ゲルバーのピアノでも、ワルトシュタインを加えて“4大ピアノソナタ”と称してのリサイタルを聴いていますので、生の「悲愴」はこれが三度目の筈。残念ながら、入りは8割程度でしょうか。
 この日の、赤いラインが入った黒のロングドレスが素敵でした。
強弱、テンポを大きく揺らしながらの悲愴。第一楽章の和音からジーンと心に響いてきます。5年掛けたという、ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を最近終えられて、2年前の演奏に比べて更にその内省的な深みを増したように感じます。大好きな第二楽章のアダージョ。そして意志の強さが感じられた第三楽章。この悲愴を聴いただけでも今日は来て良かった・・・。
ロメオとジュリエットは、CDを含めてピアノ版は初めてでしたが、お馴染みのメロディの「モンタギュー家とキャピュレット家」(「騎士たちの踊り」)のキレの良いリズムとメリハリなど、鮮やかなテクニックでバレエ音楽としてのストーリーを浮かび上がらせます。
そして、後半のメインのショパンのバラード。
革命により、祖国ポーランドに帰れなかったショパンの望郷の念。同じ故郷出身の詩人の作品にインスピレーションを得て作曲したというバラード全4曲。片や、幼い頃からピアニストを志し、僅か9歳でミュンヘンに単身渡り、地道な演奏活動を続けてきたという彼女。
難曲と云われるバラードも、鮮やかに流れるようなテクニックと、強靭な打鍵と対照的な抒情性。確かに、そこにはポーランドの風や匂いが感じられましたが、それよりも彼女の持つ意志の強さ、情熱(情念?)が感じられた演奏でした。
やっぱり、日本人ピアニストとして、今一番心惹かれる演奏家です。
 カーテンコールに応えて、この日のアンコールはショパンのエチュードから2曲。エオリアン・ハープ(前回茅野でもアンコール曲でした)と黒鍵。お見事!
【追記】
(夏は)“東京都軽井沢町”とも揶揄されますので、もっと洗練されているのかと思いましたが、演奏中の聴衆のマナーに眉を潜める場面が幾つかあったのは些か残念。また、別荘地という土地柄なのか、松本と違って聴衆の中に(ピアノを習っているであろう)お子さんたちが少なかったのも意外でした。

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