カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 大好きなピアニストでもある小菅優。これまで、二度彼女のリサイタルを聴いていますが、今回はヴァイオリンとクラリネットとのトリオの一員として松本に来演。

 2月12日のザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)でのマチネで、佐藤俊介さんのヴァイオリン、ロレンツォ・コッポラさんのクラリネットとの小菅さんのピアノによるトリオ演奏。「20世紀の作品群」と題された珍しいプログラムです。
前半に、ミヨー「ピアノ、ヴァイオリンとクラリネットのための組曲」、ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ ト長調」、ベルク「クラリネットとピアノのための4つの小品」。休憩をはさみ、ハチャトゥリアン「ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための三重奏曲ト短調」、ストラヴィンスキー「組曲 兵士の物語」という構成。
殆ど馴染の無い曲ばかりでしたが、佐藤さんとコッポラさんがそれぞれ演奏前に曲の詳しい説明をして下さり、特にコッポラさんは、A管、B管というクラリネットの種類や、現在の主流のフランス式とドイツ式の違い、演奏する曲のモチーフや音色も実演を交えてくださるなど、謂わばレクチャーコンサートでとても分かり易く、興味深く聴くことが出来ました。名手3人に依る真剣勝負の様な緊迫感溢れた演奏でした。
 知りませんでしたが、佐藤俊介さんはまだ32歳の若さですが、4歳から米国で育ち僅か10歳でアメリカのBig5の一つであるフィラデルフィア管弦楽団と共演しジュリアードで学んだという駿才(松本は、3歳の時に才能教育の「御前演奏」で演奏して以来、30年振りのステージとか)。その後バロックヴァイオリンに興味を持ちヨーロッパで研さんを積み、今ではモダン、ピリオド両方の奏法をこなし、現在はオランダを拠点に、ソロ活動のみならずオランダとドイツの古楽合奏団のコンマスを務めているという国際派ヴァイオリニストとか。国内よりもむしろ海外の方が有名なのでしょう。1歳違いの小菅さんとは15年前にお互い滞在していたミュンヘンで知り合ってからの友人などだとか。しかし巧い!太さというか豪快さと云うよりも、むしろ繊細さを兼ね備えた超絶技巧と云うべきか・・・。
ピアノもヴァイオリンも、そこそこ弾ける人間なんて、最近はそれこそ“掃いて捨てる”程いますから、有名な国際的コンクールで上入賞するか、或いはアイドル並みに容姿が良くないと売れない時代であろう中で、佐藤さんも小菅さんもコンクール受賞歴は殆ど無く、コンサートそのもので欧米の本場で名を知らしめてきた若き実力派たちです。素晴らしい!
特に大好きなピアニストの一人である小菅さんは、小学生でドイツに渡り、日本で云えば地方の公民館のような所で演奏経験を積んだという努力派(豊かな才能を活かす努力と云う一番大切な能力を兼ね備えていたというべきなのでしょうか)です。近年、ベートーヴェンの全曲演奏会を成し遂げた彼女。モーツァルトの天才さよりも人間としての“イイ加減さ”を意識してしまい、結果ベートーヴェンの持つ精神性に強く惹かれるというのも、実に生真面目な彼女らしくて共感出来ますし、それが個人的にピアニスト小菅優という人間に惹かれる理由でもあります。
 大賀ホール以来1年半ぶりに生で聞いた小菅さん。相変わらず、音の深さが印象的です。室内楽の小菅さんもイイですね。この日のプログラムが20世紀の作品群だっただけに、彼女の弾く近代モノ、とりわけラヴェルやドビュッシーも是非生で聴いてみたいと思わせてくれた演奏でした。

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