カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 せっかく山中湖に来ているので、最終日にワンコを連れて観光です。
行ったのは、忍野八海。コロナ禍の前は、忍野八海はインバウンド、特に中国人観光客に人気の観光地であり、所謂オーバーツーリズムの代表例として京都と共にTVで報道されていました。忍野八海では、ゴミを捨てる、民家の中に勝手に入り込んで写真を撮ったりご飯を食べたり、禁止を無視して池にコインを投げ入れる・・・云々。
しかし、GoToトラベルとはいえ、まだ海外からの観光客は居ないでしょうから、その間に忍野八海に行ってみようと思った次第。観光案内に拠れば、
『天然記念物である「忍野八海」は、富士山の伏流水に水源を発する湧水池です。富士信仰の古跡霊場や富士道者の禊ぎの場の歴史や伝説、 富士山域を背景とした風致の優れた水景を保有する「忍野八海」は、世界遺産富士山の構成資産の一部として認定されました。』
「忍野八海」の名前は、8つの池がとても神聖なもので、「池」というにはもったいないほど尊いから「海」と付けられたとされ、富士山を水源とするその8つの池は、「出口池」、「お釜池」、「底抜池(そこなしいけ)」、「銚子池」、「湧池(わくいけ)」、「濁池(にごりいけ)」、「鏡池」、「菖蒲池」の8つの湧水池です。

 山中湖から忍野八海へは車でホンの10分足らず。中には、サイクリングで山中湖から来られた観光客のグループもおられました。
9時前に忍野八海に到着。目に付いた駐車場に車を停めました。30台程は停められる民間の無人駐車場で、郵便受けの様な箱に300円を投入する仕組み。
まだ朝早いのか、我々も含めて3台程しか停まっていませんでした。
駐車場からは、近道という案内に従って、一番近くの「湧池」へ。周囲には土産物店があって、修学旅行と思しきジャージ姿の子供たちや我々同様の観光客で混んでいました。池に近付くと、白線が引かれていて「ここからはペット侵入禁止」とのことで、止む無くバギーを停めて、家内と代わり番こに池を観察してから、すぐ横の「濁池」へ。池というより川の一部で、脇には穂高の万水川にあるような水車があり、ちゃんとソバの粉を挽いていて、すぐそこの蕎麦屋さんでその粉で打ったソバが食べられるとのこと。そこから川沿いに沿ってしばらく歩いて行くと「お釜池」。直径2m足らずの一番小さな池ですが、コバルトブルーの深く吸い込まれる様な青色が印象的です。イワナと思しき魚が悠々と泳ぎ、豊富な湧水がその池から清流となってが流れ出していて、梅花藻がびっしり生えていました。そこから少し歩くと、集落の外れに出て、一番離れている「出口池」へ行くのですが、どこも同じような感じなので、そこには向かわずに川沿いに戻ることにしました。
そして、最初の「湧池」の先の一番賑やかな通りを進むと、そこが集落の中心地で、周辺には土産物店が立ち並んでいて、そこに「忍野八海」とは関係のない人工池の「中池」があり、この「中池」はその一番大きな土産物店の所有なのだとか。池に行くには土産物店の中を通らないと行けません。
そこで、屋根付きの休憩所の様なオープンスペースで、ワンコたちにおやつをあげながら、代わり番こに行ってみることにしました。
大きな池の中にある島への中に橋を渡り、その島の中にあるのが「中池」。人工的に掘った池だそうですが忍野の中で一番深く、湧水も豊富な様で、深さがあるためかコバルトブルーも一番深みのある青で実に印象的。大きな鯉やニジマスが泳いでいて、池の周りには「お金投げ入れ厳禁」、「罰金千円」との警告板が中国語でも書かれていました。実際、深い池の底には投げ入れられたコインが銀色に光っていました。中国では、池への投げ銭は幸運のおまじないなのだそうですが、それは最初の「湧池」も同様で、忍野では投げ入れられるコインは、毎年ダイバーを雇って取り除いていると聞いたことがあります。
土産物店や幾つかの屋台を物色していた奥様。買いたいものも食べたいものも特に無いというので、ランチも(信州から来て)ここでソバを食べてもしょうがないので、だったらホンの10分足らずの山中湖へ一旦戻って、昨日は定休日だった山梨名物の「ほうとう」を食べてから帰ることにしました。
 「忍野富士」。記憶に残る、雪を頂いた富士と茅葺屋根の古民家の風景。ある意味、日本の原風景であり、だからこそ、我々日本人ばかりでなく中国人を始め海外からの観光客の人気も集めるスポットであるのでしょう。
しかし、残念ながらその一方の主役である富士山が、この日は雲に覆われていて姿が見えなかったせいもあるとは思いますが、確かに湧水は清らかでそのコバルトブルーは印象的ではあったのですが、でも富士が無ければ或る意味“それだけ”。例えば、穂高のワサビ田と然して変わらない。ただ(我々もその一人である)観光客が多くて、その観光客目当ての俗化された店ばかりが立ち並んでいるだけで、先程の「この先はペット侵入禁止」という旅先での初めての警告に触れ、また店の前では「〇〇、どうですか?」、「すぐ食べられますヨ~!」という客呼びの声が掛かり、残念ながら“原風景”的な風情は微塵も感じられない。集落のあちこちに設けられた、手っ取り早い現金稼ぎの手段であろう無人駐車場も(観光客にはありがたい反面)何だか俗化を助長する・・・。批判されたオーバーツーリズムも、観光業(忍野であれば、土産物店や飲食店)はインバウンドの恩恵に浴していたのも事実・・・。
部外者がアレコレ批判しては失礼とは思いつつ、コロナ禍で“声高”で煩い様なインバウンドの集団が消えた中で、これが「忍野富士」のイメージを抱いて初めて訪れた「忍野八海」での正直な印象でした。