カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 大型店が郊外に進出し客足が落ちていた松本駅前も、エスパ改装後のアリオや丸善の大型書店が出来て、駅前も人通りが少し戻ったような気がします。

 4月だったでしょうか、開業110周年に合せて、2年近くを掛けた松本駅のお城口(東口)の駅前広場の改装工事が終了し、オープニングセレモニーが行なわれたとの新聞記事がありました。そして、この6月には篠ノ井線松本駅開業110周年の記念式典も行なわれたとか。

 美ヶ原を正面に望むお城口(東口)の右側(南半分)は、タクシー乗り場や市内線などのバス乗り場、駐車場などが再整備され、動線に沿って屋根も掛けられて便利になりました。
片や左側(北半分)は、それまで国鉄時代の“一駅一名物”として作られた槍ヶ岳開山者である播隆上人像を囲んで小さな欅の公園があったのですが、当時2万羽とも言われたムクドリのねぐらになってしまい、その糞害と鳴き声が凄くて入れないほどで、街中の公園も人間様ではなくムクドリの憩いの場でした。
今回の整備では播隆上人像を設置しただけの“ただの広場”になったように見え、毎日通勤で使っていた松本駅ですが、正直シンプル過ぎて味気なく、また松本らしさも感じられず、松本市民の一人としては正直あまり感心しませんでした。唯一の“らしさ”は、井戸を掘って地下から汲み上げている湧き水「深志の湧水」でしょうか。
 ところがある雨の日、帰りに飲み会があって東口に降りて見ると、どこからか芳香が漂って来ます。それはヒノキの香りのようでした。
訝って、香りのする方向を探して見ると、広場の中の直径20mくらいはありそうな円形部分が、周りの石畳とは異なり、薄茶色の木の板がタイルカーペットのように敷き詰められていて、晴れの日には気が付かなかったのですが、どうやら雨に打たれてヒノキ(多分)の香りがそこから広場に漂っていたのです。
森林浴のような森のアロマが周囲に立ち込めていて、松本らしいかどうかは別として(ヒノキと言えばやはり赤沢美林に代表される木曽でしょう)、如何にも信州らしい感じがしました。
目や耳だけではなく、鼻で“見せる”、感じさせる見せ方(作り方)もあるのかと感心して、ビル街に漂う木の香を暫し楽しんだのでした。
 もし意図的であるとすれば、それなりに工夫されているとは思うものの、何年も持つのかどうか、香りの持続性は分りませんが、梅雨に入りましたので、もし雨の日に松本駅に降り立ったら、駅前広場でヒノキの香りを探してみてください。