カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 ツアー第二日目。冬の北陸には珍しく、昨日とは打って変わって好天です。
いつものように早朝暗い内に目覚め、明るくなるのを待ってから、コンビニに朝のコーヒーを買いがてら、一人金沢駅へ散策です。
ホテルの外へ出てみると、日本列島全体が冷え込んだこの日(松本では氷点下12℃だったとか)は、金沢も珍しく凍結していて歩道はガリガリ。一方、主要な車道は、自動散水で見事に融けています(信州だと、融ける端からまた凍るので無理かも)。これなら、「弁当忘れても、忘れるな!」と云われる傘も今日は不要かもしれません(変わり易い冬の日本海側の天候のみならず、晴れていても湿り気のある雪が頭上の電線や木々から落ちてくるので、地元の方々は晴れた日も傘をさしていて、昔訪れた時はビックリしたものです。今では恐らく地中に電線も埋設されているでしょうし、街中では心配ないかもしれませんが、兼六園では要注意)。

 金沢駅は、2011年に米国の旅行雑誌により「世界で最も美しい駅」の一つに選ばれたのだとか。能の「鼓(つづみ)」をデザインしたという木で組まれた鼓門(こもん)と、美しい総ガラス張りの「もてなしドーム」(雪降りに旅人が濡れぬ様に、そっと傘を差し出す“おもてなし”をイメージとか)のモダンな東口駅舎。2015年に長野以北金沢まで延伸される北陸新幹線を迎えるに相応しい威容で、北陸50万都市の顔も準備万端の装いでした。
 この金沢は、学生時代に憧れた街でもありました。
加賀百万石の城下町として、京都とはまた一味違った伝統文化の残る北陸の古都。そして、室生犀星が「遠きにありて思うもの」と偲んだ故郷でもあります。また、同じ漢字の犀川を、松本のように濁らずに「さいかわ」と頭にアクセントを付けて呼ぶ柔らかさに、何となく関西風を感じてもいました。
社会人となり、採用担当時代に大学訪問としても何度か訪れていますが、今回は何十年振りか、駅前から香林坊周辺の近代的に生まれ変わった街並みにはビックリです。北陸の中心都市としての貫禄が漂います。
一方戦災に会わなかった金沢に残る、雪から守る菰(こも)で覆われた土塀の続く長町武家屋敷(野村家の庭園が見事でした)。利家とお松の方を祭るギヤマンで有名な唐門(重文)の尾山神社。そして、久し振りの金沢城と昨日のライトアップとはまた趣の異なる昼間の兼六園。
ハイデルベルク大学(嘗て新婚旅行で行きましたが、どうやら中世の城郭都市内にある大学ということらしい)同様に、お城の中の大学として知られた金沢大学(お城の中の大学は、両大学の世界に二つだけと当時伺った記憶が・・・?)は既に郊外に移転(平成7年)し、今はナマコ壁が印象的な石川門や三十間長屋(いずれも重要文化財)を始め、大学が立ち退いた跡地に復元された河北門や五十間長屋などの建物の復元工事が進む広大な平山城の城跡の金沢城公園。
そして石川門から続く国の特別名勝兼六園(宏大、幽邃、眺望など、勝れた名園の条件六つを兼ね備えた庭園との意から名付けられたのだとか)。園内全体では総使用量が毎年4トンにもなるという、荒縄で施された芸術的な雪吊りが兼六園の冬の風物詩です。琴に見立てた虹橋越しに、霞ヶ池の端に立つ庭園のシンボルでもある徽軫灯籠(ことじとうろう)や、見事な枝ぶりの唐崎松(何と一本の黒松)や根上松。歩き辛いのはともかくとして、昨晩の降雪が冬の金沢の情緒を一層増してくれているようです。
 市民の台所でもある近江市場で、妹たちへの海産物などのお土産の買出しと昼食。和服姿で食材を買われているご婦人を何人も見かけるのも、古都ならでは。昼食は回転寿司にしましたが(値段は決して安くありませんが)、新鮮な地物のノド黒などの魚介類に感激。家内は天然物の平目に、私メは新鮮で驚くほど柔らかかったイカゲソとノド黒の炙りに感動。「ふ~、美味しかったぁ・・・」と、暫し溜息(但し、次女の住む成田のお寿司屋さんの方に、比べればコスパを含めお互い1票と同意見)。
 昼食後、浅野川右岸の東茶屋街へ。ここは江戸から明治に掛けての花街で、130メートルの道沿いに二階屋の町並みが整然と並んでいます。木虫籠(きむすこ)と呼ばれるベンガラ格子の美しい町屋が軒を連ねる重要伝統的建造物保存地区。町屋を改装した茶房で2階から通りを望み一休み。深煎りのコーヒーが美味でした。奥様は、ラテと古都金沢らしく金箔をあしらった鹿の子の和菓子に舌鼓。格子の内側からの景色も趣があります。夜、夕食がてらゆっくりと訪れるのも良さそうです。
 最後に、金箔工芸の箔座(これまで、中尊寺金色堂を始め、国宝の金箔修復を殆ど担当とのこと)に立ち寄り。加賀藩以来の伝統工芸で、今でも金沢は国内の金箔生産の99%を占めるのだとか。奥様は娘たちへのお土産を物色。余談ながら、化粧用の油とり紙が、金箔の包み紙の再利用とは知りませんでした。
 以上足早ではありましたが、朝8時半から欲張って市内7ケ所を巡り、午後2時過ぎに金沢を後にしました。帰路は、途中車窓から雄大な立山連峰を右に冬の日本海を左に見ながら、北陸道から上信越道経由で上田まで。新幹線に乗り換える皆さんとは、上田駅でお別れ。
お互い見ず知らずとはいえ、添乗員さんやガイドさんの心配りで、和気あいあいの旅行でした。初めての参加でしたが、若い頃や子供連れの時はともかく、中年夫婦にとっては、乗っているだけで連れて行ってもらえるバスツアーもなかなか良いものです。
また2015年に金沢まで新幹線が延伸したら、今度は自分たちだけでゆったりと金沢を巡るのも良いかもしれません。話題の21世紀美術館や県立美術館、そしてOEKの定演を本拠地の石川音楽堂で聴くのも一興でしょうか。冬の奥能登にも是非行ってみたいものです。

 上田から松本へ車で向かいながら、「楽しかったね・・・」と家内が名残惜しそうに一言。父が倒れてから7年・・・初めての旅行でした。
「うん・・・。またどこかに行こうか・・・。」