カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2月11日。まつもと市民芸術館。
夕刻、劇団四季による全国ツアー「コーラスライン」の松本公演が行われ、数十年振りのミュージカルを見に(聴きに?)行って来ました。
今回は長野市の「オフィスマユ(繭)」の主催。クラシックを主体に県内でのコンサート等を企画する地方の良心的な事務所で、何度かチケットを購入しています。今回は、奥さまのご希望(クラシックばかりじゃなくて、たまにはミュージカルも)と、個人的には初めてのバルコニー席に興味津々。

 まつもと市民芸術館は、旧市民会館跡地に2004年に建設された、地方(全国的にも?)には珍しい馬蹄形の劇場。市の公共ホールです。
大ホールは、4層のバルコニー席を両脇に備えた最大1800席で、SKF(現OMF)のオペラの主会場。公共施設としては贅沢で、2000席の県文(キッセイ文化ホール)や700席の音文(ザ・ハーモニーホール)が既に在る地方都市に、本当に必要なのかの議論もあり、個人的にも当時は疑問(150億円近いという多額の建設費として市民の税金を投入するだけの意義や価値)も感じない訳ではありませんでしたが、結果として造ってしまった以上は積極的に活用されないと宝の持ち腐れです。幸い、年に一度あるかないかのオペラだけではなく、演出家の串田和美さんが開館以来の館長として、演劇や歌舞伎(平成中村座)を企画されているのは市民としても心強い限りです。奥さまは、以前市民劇場の会員だったので、観劇で何度も来られていますが、私メは綾戸智恵と落語に、今回が三度目です。
こちらホールの難点は駐車場が少ないこと。今回も、駅周辺の民間駐車場に車を停めて、歩いて市民芸術館(昔の市民にとっては市民会館と言った方が馴染み深い)へ向かいました。途中、駅前通りは同じように駅から歩いて向かう人通りが多いので、空(す)いている天神通りを歩き(但し狭いので、車には気を付けて)、深志神社にお参りをして裏から芸術館へ。この日はバルコニー席も含め、殆ど満席の盛況。
 その、初めてとなるバルコニー席。場所はステージに向かって右側の2層目。音響的にはともかく、視覚的にはステージが近いので、観劇やオペラには好いかも。ただ、少し斜めに見る感じになるので、結構疲れます(死角になる方向、今回だとステージ右側を見ようと首を左にあまり傾げると、後ろの奥さまから「(後ろの人たちの)邪魔!」とダメ出しされました)ので、バルコニーで見るなら最前列が良いかもしれません。
 “久し振りのミュージカル”とは、30年以上前に上京して見た(まだ常設劇場が無く、西新宿の仮設テントだった)劇団四季の「キャッツ」以来。その後化粧品CMにも出た久野綾希子とか、男優では元ジャニーズ出身でミュージカルに転向した飯野おさみとか、当時結構話題になった看板スターがいましたね。
今回の“コーラスライン”は、ご存じ1975年初演のブロードウェイ・ミュージカル。90年の最終公演まで15年間上演と、その後「キャッツ」に更新されるまで、ロングランを記録した人気作品。2006年にリヴァイバルされ、映画化もされています。日本では、79年から(キャッツより早かったとは知りませんでしたが)上演されている劇団四季の看板作品の一つ。
英語名は“A Chorus Line”で、冠詞「A」が付いているのは、新聞等の上演リストの一番先頭に載るように狙ったためとか。そしてそのChorus Lineとは、ステージ上に惹かれた一本の白い線。メインキャスト(スター)とその他大勢のコーラス(ダンサー)を隔てる線で、脇役は目立たぬように、その線から前に出てはいけないことを示しているのだとか。
 「君たちは額縁なんだ。決して目立ってはいけない」
そのミュージカルの脇役の最終選考に残った、17名のオーディションの様子そのものがストーリー。実際のオーディションに現れた人たちの実話が基にもなっていて、その葛藤や障害を乗り越えようと、必死に、そして正直に生きるマイノリティーの人たち様子は、当時の世相も反映(ウォーターゲート事件への批判)されているのだそうです(有名ですので、以下説明省略)。
 この日は、夕刻5時開演で終演が7時半。白い線の引かれたオーディション会場が舞台となる一幕物で、その間休憩無し。従ってキャストの人たちは、歌とダンスで殆ど2時間半の出ずっぱり。昔に比べれば格段にスタイルも良くなり、稽古で鍛えられてもいるのでしょう。セリフも口を大きく開けた発声で声量も大変豊か。踊りもキレがあり、実に感心しました。
・・・が、内容はNYのブロードウェイそのものであり、米国の社会的背景や人種問題(黒人やヒスパック、アジア系などのマイノリティー)、同性愛などへの我々の理解不足と、オリジナル版のダイナミックさとはやはり違うのだろうと思います。また、歌も「メモリー」に代表されるキャッツなどに比べると、大ヒットしたナンバーが少なく、残念ながら(魂が揺さぶられる程の)感動は個人的にはありませんでした。

 ・・・などとあまり大袈裟に考えずに、地元で観劇出来た久し振りの劇団四季のミュージカル。盛大な満場の拍手で幕を閉じ、観客の皆さんが口々に感想をそれぞれの連れ合いの方と話しながら一緒に歩く駅までの道のりも(考えてみれば、都会のNHKホールやサントリー、すみだトリフォニーよりも、この市民芸術館は遥かに駅に近い)、普段(すぐ横の駐車場で車に乗ってしまう音文)のコンサートとは一味違う、“都会的な”心地好さでした。
(我々田舎の人間も、もっと都会の人の様に歩いて、コンサート後の、或いは観劇後の余韻を楽しまないと、文化的とは言えないかもしれませんね)

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