カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 今回の旅行では、コロナ禍故に出来るだけ外食は避けて、キッチン付きのドッグヴィラでの部屋食が中心です。そこで、調理器具と食器類は部屋に常備されていますので、今回は野菜類や調味料を信州から車に積んで持参して来ました(箱根にはJAの小さな食品スーパーしかありません)。

 箱根は山の中ではあるのですが、“天下の嶮”を挟んで東西の小田原や御殿場へ、車ならそれぞれ30分程の近さ。特に小田原は、駅伝の中継地点の鈴廣本店に代表される様に蒲鉾で有名(提灯も)ですが、相模湾に面しており、日本三大深湾(注)の一つであるその相模湾には、なんと魚類約1600種類、カニ約350種類という多種多様な魚などが生息しているといわれ、魚介類の宝庫でもあります。謂わば、山国信州の人間にとっては垂涎の的、憧れの地です。
以前西伊豆へ行く際に寄った静岡の沼津魚港と、小田原魚港(早川漁港)。規模は沼津の方が遥かに大きいのですが、こじんまりした小田原の方がコンパクトでむしろ分かり易い感じがして、もし宿から等距離だったとしても、個人的には小田原漁港の方を選択します。

 小田原漁港の“名物”海鮮丼。前回は市場の2階にある人気の「魚市場食堂」へ行ってみたのですが、確かに評判通りの行列店で、メニューも多くて値段も安くコスパは良いとは思いましたが、鮮度は良かったものの、味については(特に期待していたお目当てのアジフライは)正直評判程は感心しませんでした。
今回は、個人的にはフライやたたきや刺身などの鯵尽くしの専門店が気になったのですが、残念ながら奥さまは光物が苦手。そこで今回は地元の仲卸の水産会社の直営店で、地魚の海鮮丼がお薦めという「めし家やまや」へ行ってみることにしました。
「やまや」は、コロナ対策で各席をアクリル板のパーテイションで仕切った10席程しかないL字型カウンターの小さな店で、12時前に着いたのですが既に満席で順番待ち。こちらも人気店です。
外で待っていると、スタッフの若いお兄さんが気を使って出て来られ、
 「もし決まるなら、席が空いたらすぐに食べられるように注文をお聞きしておきますヨ。」
とのこと。
そこで、私メはこの日のサービス定食だった、地魚が10~12種類だったかが載る海鮮どど丼(以下税抜きで1600円)と追加のアジフライ(2枚で500円)のセットで1800円。家内は、珍しい鯵を使ったコロッケの入るというミックスフライ定食(1350円)をチョイスしました。
 20分ほど待って店の中へ。男女各2名が働く板場は狭くて窮屈そうですが、和気あいあいとして活気があり、板長さんはナントうら若き女性。スタッフにテキパキと指示もしながら、惚れ惚れする様な彼女の見事な仕事ぶりで、カウンター越しに感心しながら間近で拝見していました。もし声を掛けていいなら、「イヨッ、アッパレ!!」は間違い無いでしょう。
魚は全て彼女が捌いていて、どど丼に載ったこの日の地魚を時計回りに全部説明してくれました。マグロの脳天に始まり、アジ、何種類かの鯛(炙りも)、ヒラメ、スズキ・・・覚えられませんでした。その日の入荷内容に依って地魚の種類は変わるそうですが、どれも新鮮でシコシコ。ヒラメや鯛、マグロは家内も好きなのでシェアしていただきましたが、今まで食べた海鮮丼で一番美味しかったと二人とも感激でした。セットのアジフライも(ミックスフライ定食のアジフライに比べると少し小振りですが)サクサクふわふわで、タルタルソースととんかつソースで頂きます。加えて、味付けの上品な煮付けの小鉢、お新香、味噌汁(この日はアオサ)も付いています。ご飯(丼は酢飯)の量は、大盛か小盛か事前に聴いてくれます。家内は小盛、私は残してもいけないので普通盛でお願いしましたが、海鮮丼は酢飯もイイ味でしたし、山盛りの刺身と更にアジフライもあったので、もしかしたら大盛でも食べられたかもしれません(普通盛で十分にお腹一杯にはなりましたが・・・)。
家内の頼んだミックスフライ定食も、大振りのアジフライに始まり、エビ、白身の地魚に加え、店の名物という鯵のコロッケは、ポテトと鯵のたたきを使い、梅肉と、大葉も加えて臭みも消されていて、大変美味しかったそうです。
「やまや」はカウンターだけの狭くて小さな店ですが、鮮度と味は勿論、女性店主をはじめとするスタッフの皆さんの作る雰囲気も実にイイ店でした。
値段は多少高くても、前回の魚市場食堂よりも遥かに感動モノ!でした。小田原で食べる時は、もう他を探さずに毎回ここで良いと思います。たった二店だけで判断しては小田原に失礼かもしれませんが、“海無し県”信州人にとっては「もうここで十分!」と、納得の名店発見でした。
お礼を言って外に出ると、3組ほどが順番待ちでした。因みに、神奈川県の蔓延防止対応で酒類は提供されていません。従って、ランチは良いとしても、暫くの間の夜は(飲兵衛にとっては)少々辛いかもしれません。
 食べてから、すぐ横の干物屋さんとさかなセンターで、買い出しです。
予定では、鍋用の地魚を買おうと思って(松本からそれ用の野菜まで持って来て)いたのですが、既に鍋の季節ではなかったので、この時期は鍋に使えるような鮮魚類は無く、せいぜいハマグリやホンビノスなどの貝類か伊勢エビくらいとのこと。そのため予定変更で、前回も同じ処で買ったマグロとヒラメの刺身が、どう頑張っても山国信州では食べられない程にプリプリで美味しかったので、今回もマグロの刺身(残念ながらヒラメ等は見当たらず)とステーキ用にマグロのほほ肉(「やまや」にあったステーキ丼に感化されました)を購入。持参した保冷バッグに(お店でも「氷入れますか?」と聞いてくれましたが、凍らせた保冷剤をちゃんと持ってきたので大丈夫!)に入れて、更にお隣の店で今回も大振りのアジの干物(ワケあり品のため6枚で600円!)をパックで購入して、一路箱根に戻りました。
【注記】
日本三大深湾は、相模湾と伊豆半島を挟んだ駿河湾に、日本海側の富山湾。水深は駿河湾が一番深く2500mで、伊豆の西海岸で深海魚やタカアシガニが名物なのも納得です。相模湾は1500mで、氷見ブリや白エビ、ホタルイカで知られる富山湾が1200mとのこと。それぞれ魚の宝庫です。
こうしてみると、駿河湾と相模湾は正に日本列島の大きな溝であるフォッサマグナ(大地溝帯)に位置しており、また富山湾もその西側を走る糸魚川静岡構造線のすぐ横にあるので、深湾の形成に関係しているのかもしれません。しかも、駿河湾と相模湾のすぐ“脇”には“日本一”の富士山があり、富山湾のすぐ背後には“日本の屋根”北アルプスの3000m級立山連峰が聳えるという、それぞれ興味深い地形です。
【追記】
今回の大雨で、箱根は二日間で700㎜の降水量を観測とのこと。熱海では大規模な土石流が発生し、懸命な救助作業が続いています。私自身、15年前に起きた長野県岡谷市湊地区の土石流の片付けで被災地へ応援に行った際、土石流の凄まじさを実感しました。今回被災された方々には謹んでお見舞い申し上げます。