カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 以下、ここ数ヶ月間に通勤時に読んだ文庫版の独断的感想にて悪しからず。

 加藤廣の本能寺三部作の最後である『明智左馬助の恋』。
良かったですね、個人的には『秀吉の枷』よりも。ただ、最初の『信長の棺』で後の種明かしを殆どしてしまっているので、第一作ほどの高揚感は残念ながらありませんでした。
しかし、山一證券勤務を経て、75歳(現80歳)でデビューした作家の作品とは信じられませんね。

 海堂尊『ブラックペアン1988』。
『チームバチスタの栄光』より前に執筆されたというだけあって、「バチスタ」を髣髴させる印象で、社会派に傾倒した『イノセントゲリラの祝祭』よりも、“メディカル・エンターテイメント”の本流(源流?)として遥かに面白かったですね。ただ個人的には『ジェネラルルージュの凱旋』が緊張感、スケール感で一番かなぁ。
しかし、連作と言うか、今度は文庫本でジェネラルこと速水医師を主人公にした剣道の“青春小説”(『ひかりの剣』)とか。ここまでくると、桜町を舞台に少々拡げすぎではないか、と些か心配になります。

 初めて買った、和田はつ子『料理人季蔵捕物控シリーズ』第一作の『雛の鮨』。
この作家のシリーズは既にかなりの冊数があり、同じ出版社の高田郁『澪つくし料理戸帖』が良かったのですが、その第4作がなかなか出版されないため、誘発されて買ってみました(同じ料理を題材にした下町舞台の時代小説)。
著者は、TV脚本に始まり、時代小説だけではなく、ミステリーやホラー小説など、他にも結構な著作数がある作家のようですが、残念ながら少なくともこちらは、時代小説に色んな要素を詰め込みすぎでしょう。
「澪つくし」(登場する料理が本当に美味しいかどうかは別として、料理の描写が如何にも食指をそそります)ほどは料理が主題とも言えず、人情話も(比較すると)個人的には今一つ。
また捕物帳を名乗りながら、“Who done it ?” としては、(一話完結の限られた頁数内での)必然性の導き方が余りに唐突で、「えっ、何でそうなるの?」と、最初、どこか読み飛ばしたのかと思ったほどです。
一冊だけで判断するのは性急とは思いつつも、失礼ながらそんな気がしました。

 さて、遂に読む本が無くなってしまいました。今度は何を買おうかなぁ・・・。
家には、村上春樹『1Q84』を始め、真山仁『レッドゾーン』など以前家内の買ったハードカバーが何冊かあるのですが、通勤用には重いしなぁ・・・。

・・・と、購入したのは少々内容が重そうではありますが、終戦65周年という節目でもあり、居住いを正して、百田尚樹『永遠の0(ゼロ)』。
読みながら何度か目頭が熱くなりました。(後日、改めてもう一度読み直すことにします)

 そして、漸く高田郁『澪つくし料理戸帖』の第4弾「今朝の春」が発売されるという新聞広告を目にしたので、早速買い求めました。ムフフ、楽しみ(レシピも)です。

・・・と、大事に読もうと思ったのに、引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。ムム残念・・・。第5弾待ってまーす!

この「澪つくし」の良さは、登場人物の誰もが大きな不幸を背負いながらも、赤の他人なのに本当の家族以上にお互いを思いやり、また皆で支えあって前向きに生きていること。江戸の下町の暖かさが、何とも言えずホンワカと心に沁みてきます。
実の親子でも悲惨な事件が報道されますが、この国にはこうした他人への思いやりが、どこかにきっと残っている筈。そんな気持ちにさせてくれます。

【追記】
第304話でご紹介した、『澪つくし料理戸帖』の「忍び瓜」。

酒の肴として切らさぬように作っていますが、オリジナル・レシピ以外の一工夫でタラのすり身の燻製?を入れてみました。おつまみ用として「白雪」とか言う名前で販売されています。こちらにも漬け汁がしっかり染みてアクセントになります。もう一方はタラを入れずにほぼレシピ通りです(但し分量は初回を除き最近は適当に目分量で、しかもダシには手抜きで濃縮つゆ使用)。
そろそろキュウリのシーズンも終わるので、そうしたら「クリームチーズの味噌漬け」(第238話参照)に戻ろうと思います