カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2月下旬から松本駅の自由通路で、『報道されない命たち』と題して展示されていた小さな写真展。

 避難指示が出された福島原発の、半径20km圏内の警戒区域に置き去りにされたペットや家畜のパネル写真。立ち入りの許可を受けてのボランティアの方々の保護活動の傍ら、現地の様子を撮影したものだそうです。
勿論無事保護された動物たちもいる中で、中には間に合わずに餓死した犬やネコ、また鶏や牛などの家畜の写真もあり、その現実に辛過ぎて涙が止まらずに全部を正視することができませんでした。
普段はキャピキャピしているであろう女子高生の皆さんも眼に涙を貯め、手で口を押さえて見ています。足を停めて眺める人たちも皆無言です。

 避難に際し、泣く泣く置いて行かざるを得なかった動物たち。しかしそれは飼い主のせいではなく、ましてや彼等のせいでもありません。
動物とは言え、命に軽重などある筈もなく、なぜ犠牲にならないといけないのか、何の罪も無い彼等や飼い主はこの怒りを誰に向けたらいいのでしょうか?
写真の中の命尽きた動物たちに、犬を飼う人間の一人として「ごめんなぁ・・・」と言ってやることしか出来ませんでした。

 彼らを撮った写真集も書店に並んでいます。
原発を造りその恩恵にも浴してきた身勝手な我々人間としては見る義務があるのかもしれませんが、気にはなっても辛過ぎてどうしても手に取ることができません。
その表紙に写った野生化した柴。震災前は優しい眼をしていたであろう彼の、人間(カメラ)に向けた怒りに満ちた眼が痛いほどに悲し過ぎます。

 震災のあまりに大きな人的被害の影で、世間から忘れ去られた動物たちがいます。

【追記】
この小さな写真展は、活動に賛同した松本市内にある地元の専門学校の動物看護師学科の先生が企画したもので、東京在住の星さんご一家を中心とした民間の動物レスキュー隊(星ファミリー)が、置き去りにされた動物たちへのエサくれやペットの保護活動(特に5km圏内を重点的に活動されているとか)の傍ら撮影した写真だそうです。
彼ら自身が出掛ける度に泣きながら活動し、その都度辛過ぎる現実(「死臭漂う街」という一文からも、その想像は難くありません)に「もうやめよう!」と思いながら、保護し送り届けた時のペットたちの喜ぶ様子と飼い主の喜びの涙に励まされて今も続けているのだとか。

原発事故から3ヶ月半。「瓦礫作業の方から、ウチのプータがまだ生きていると聞いたので、お願いですからどうか助けてください!」と飼い主に懇願されて、原発近くの飼い主の家の付近でその名前を呼ぶと一目散に駆け寄って来て無事保護された秋田犬の雑種プータ。「お前がプータか?ヨシ、良く頑張った!」と、車に載せると安心したのか、星さんの体に自分の巨体を圧し掛けて移動中もずっと離れようとしなかったと言います。避難先から全員で駆けつけた飼い主ご一家は、皆泣きながらプータとの再開を喜びあったとか。

パネルと一緒においてあった説明資料に、この “動物レスキュー”のボランティア団体「星ファミリー」への活動支援(圏内にいる動物たちへのエサ代、保護した動物の健康診断や仮置きの小屋設置費用、福島への隊員の移動交通費など)の呼びかけがありました。企画された専門学校の先生の書かれた文章に、「松本から車でホンの6時間の所にこの現実があります。」という言葉に「確かにそうだよなぁ・・・」とその想いを新たにして、身勝手な我々“人間”が飲み会を数回我慢すればイイヤと思い、ホンノ気持ちばかりですが動物たちのエサ代にでもなればと寄付送金をさせていただきました(ネット送金を頼んだら、家内が上乗せをしてくれました)。
この時期でしたので、3.11まで掲示されるとばかり思っていたのですが、事情不明ながら僅か4日ほどで撤去されてしまい、展示の様子は撮影できませんでした。なお、「星ファミリー」でネット検索をすればすぐに活動の様子が見つかりますが、参考までに、
星ファミリー:三井住友銀行 吉祥寺支店 普通7316452
口座名義人 星広志(ホシ ヒロシ)