カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2月13日、マチネでのザ・ハーモニーホール(音文)。
この日、第5回となる松本バッハ祝祭アンサンブルの演奏会が行われました。二年振りとなる今年は、13日がバッハのチェンバロ協奏曲、翌14日はヴァイオリン・ソナタとマニフィカト。
 松本バッハ祝祭アンサンブル(以下祝祭管)は、2007年に松本市制施行100周年を記念して結成された小林道夫氏率いる古楽器アンサンブル。ピアノ伴奏者としても世界的に有名な小林さんの指揮とチェンバロで、小林さんに学んだ古楽器奏者がプログラムに合わせて演奏会毎に集まります。結成以来のコンサート・マスターは、スズキメソードで学んだ長野市出身の桐山健志さん(確か、あだ名が“殿下”で、一目見れば納得)。チェンバロのもう一方は、今回も(前回の「ロ短調ミサ」でも弾かれた)大塚直哉さん。朝のNHK-FM「古楽器の楽しみ」でもお馴染みです。今回は、磯山雅先生の事前レクチャーはありませんでした(毎回楽しみにしていたのでチョッピリ残念)。
音文事務局からは「是非!」と薦められていたので、演目的には興味もあってどうしようか悩んだのですが、二日前にコーラスラインを鑑賞したばかりですので、今回はチケットを購入していませんでした。ところが、奥さまが娘たちのところに上京することになり急遽不在。また、週末の天気も雨予報とのこと。この分だと外で仕事が出来そうも無いことから、晴耕雨“聴”で「ホンジャ、独りで聴きに行きますか!」(独り言です)となった次第。
コンサートは二日連続ですが、曲目への関心から今回は初日のみの参加。

 バッハの代表作でもある、チェンバロ協奏曲。その多くは、ライプツィヒ時代に指揮者を務めていた楽団用に、自身のヴァイオリンやオーボエの協奏曲などを(4台用の協奏曲だけは、ヴィヴァルディの「調和の霊感」から)チェンバロ用に編曲したものだとか。
因みに、チェンバロ(英語でハープシコード、仏語ではクラブサン)は、鍵盤で弦を叩くピアノと異なり、ギターの様に弦を弾く撥弦(はつげん)鍵盤楽器。そして、以前NHK-FMに出演された国際的チェンバロ奏者の曽根麻矢子さんによると、チェンバロのピッチは、現代のモダンピッチ(A=440 Hz)よりも半音低い(バロックピッチ。A=415 Hz)ため、絶対音感をお持ちの曽根さんは、桐朋時代にチェンバロに魅せられてピアノから転向された時に「気が狂いそうだった」そうです。私メは、娘のような絶対音感を持ち合わせていませんので、幸い全く違和感はありません。

 今回のプログラムは、小林さんの弾き振りで、2台のチェンバロのための協奏曲第2番ハ長調BWV1061a(弦楽伴奏無しの版で2台のチェンバロ演奏のみ)とチェンバロ協奏曲第1番ニ短調BWV1052 が前半。
休憩を挟んだ後半に、オーボエとチャンバロのための協奏曲(チェンバロ協奏曲第8番)ニ短調BWV1059、2台のチェンバロのための協奏曲第1番ハ短調BWV1060。今回の弦楽合奏は、Vn.2本、Va.、Vc,、Cb,が各1本という、弦楽五重奏での小編成でした。
因みに、2曲目の第1番は、「のだめ」で千秋がパリのデビューコンサートで(ピアノ協奏曲第1番として)弾き振りしましたっけ。因みに、この日のアンコールは、「色々探してみたんですが、なかなか2台のチェンバロ用に相応しい曲が無くて・・・」と仰られて、モーツアルトの連弾用ピアノソナタ(初期の作品の由)から第二楽章とか(作品番号等は聞き漏らしました)。
 松本バッハ祝祭管を率いられる小林道夫さんは、日本のチェンバロ界の第一人者のみならず、昔NHKでも視た記憶がありますが、故フィッシャー=ディスカウなどの来日公演等でピアノ伴奏を務められており、伴奏者としても超一流(かの故ジェラルド・ムーア氏に比肩するとまで内外で評価されている由。余談ながら、サヴァリッシュさんも巧かった)。また、日本のバロック音楽、特にバッハの権威として知られ、ドイツ留学から戻り招かれた東京藝大バッハ・カンタータ・クラブ(学生団体)で、指揮者としても、また今を時めくバッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明さんを始め、この日共演された大塚さんなど、多くの古楽器奏者を指導されてもおられるそうです。
藝大を始めとする大学でも教鞭を執られ、既に齢80歳を越えられておられる筈ですが、背筋を伸ばし弾かれる様子は年齢を微塵も感じさせません。にこやかな笑顔で、その人柄が滲み出る様な穏やかな演奏。決して派手な部分こそありませんが、真摯で、心が洗われる様なバッハでした。
 正面にパイプオルガンを備え、教会の様なザ・ハーモニーホール。
“松本バッハ祝祭アンサンブル”という命名の通り、ヒマラヤ杉に囲まれたこの音文にはバッハが良く似合う。そして、アルプスに抱かれた松本の街にもバッハが良く似合う・・・。だからこそ、
「SKOもOMFも結構ですが、“松本”を冠したバッハ祝祭管も大切にしなくっちゃ!」(あくまで個人的感想です。“渋い”バッハとは云え、この日の客席は7割方しか埋まりませんでした。残念!)

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