カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 翌朝、ワンコたちの早朝散歩の後、朝食を食べてからワンコたちをドッグバギーに載せて温泉街を散策してみました。
山代、山中、片山津の加賀温泉郷の中で、開湯1300年と云われる山中温泉。奥の細道の旅の途中で、終点の大垣を前に旅の疲れを癒すべく、芭蕉が九日間逗留した温泉で、
 「山中や 菊を手折らぬ 湯の匂い」
(薬効のある山中温泉のお湯ならば、菊の露など飲まなくても700年の不老長寿が得られるに違いない)とその名湯ぶりを称え、またここで、これまで同行して来た曾良と別れる際に、
 「今日よりや  書付け消さん  笠の露」
(今日より一人旅となるから、笠に書いた「同行二人」の書付を、落ちる涙で消すことにしよう)と詠んだそうです。

 山中温泉は大聖寺川に沿った温泉街で、文字通り山の中にあり(10月に、町の近くで熊が出没して全国ニュースにもなりました)、そのメインストリートが“ゆげ街道”と呼ばれています。
町の観光案内のパンフレットに依れば、
『総湯「菊の湯」からこおろぎ橋付近まで約600メートルの目抜き通りです。山中漆器や九谷焼などのギャラリー、カフェやお食事処が数多く軒を連ね、人気のコロッケ店など個性ある魅力的なお店もたくさんあります。電柱がなく幅の広い歩道が整備されており、温泉街の情緒を感じながらのんびりと散策ができます。』
とのこと。

ちょうど紅葉の盛りを迎えていたので、ワンコと自分たちの朝食の後、先ずは山中温泉の景勝地である大聖寺川の渓谷の鶴仙渓を歩いてみることにしました。川沿いには遊歩道も設けられていましたが、階段が多くてドッグバギーでは無理だったので、「こうろぎ橋」付近の紅葉を愛でてから、温泉街に戻って「ゆげ街道」を.散策しました。
こうろぎ橋付近から「総湯 菊の湯」辺りまで600mの「ゆげ街道」は、国道364号線に沿った山中温泉街の南側半分。聞けば、平成に入ってから、道路幅6mから倍以上へと拡幅するのに併せて全店舗を再構築と大改修を行い、電線を地中化するなどして10年近くを掛けて温泉情緒ある街並みに変貌させ、「ゆげ街道」と名付けたのだとか。
山中温泉そのものは先述の通り1300年の歴史があっても、ご多分に漏れずバブル崩壊で大手鉄道資本が経営するホテルが破綻するなど温泉地として衰退する中で、危機感を持った町全体が一体となって活性化に取り組んできたのだそうです。ゆげ街道と呼ばれる道沿いには、温泉旅館の他に、九谷焼や山中漆などの土産物店、ギャラリー、飲食店などが道の両側に軒を連ねています。
勿論、若者向けの安価なホテルチェーンの進出などの効果もあったのかもしれませんが、元々あった温泉地としての歴史や九谷焼や山中漆発祥の地という文化、鶴仙渓という自然などの資産を中心に、観光地全体としての魅力をふまえ、温泉街の散策を楽しめるようなギャラリーや喫茶、食べ歩きの店など、若者向けの店舗を融合させてきた結果なのだろうと思います。
山中温泉の大きな旅館の駐車場を見ると、関西系のナンバーの車が過半数を占めています。やはり、関東からは車で来るには加賀温泉郷は遠過ぎると云えます。勿論、北陸新幹線効果で金沢観光とセットで関東圏から車ではなく電車で来られている方も多いのかもしれません。
実際に歩いてみて感じたのも、思いの外観光客が多く、それも意外な程若い人たちが多いことでした。例えば、閑散とした松本の浅間温泉や上諏訪温泉と比べると雲泥の差。同じ温泉地、しかも“山の中”の温泉地で一体何が違うのだろう?と散策しながらずっと考えていました。山中温泉も歴史ある総湯を除けば、個々のコンテンツそのものはそれ程大したモノではないのです。美しい渓谷はどこにでもあるでしょうし、山中座も古くはなく、九谷焼や山中塗の他は、別に地元出身でもない片岡鶴太郎のギャラリー、食べ歩きは人気のコロッケにお団子・・・。美味しかったけれど別に唯一無二ではない。
片や、松本の浅間温泉や美ヶ原温泉、また上諏訪温泉にも個々には大人気で予約が取れなかったり、ユニークな取り組みで話題となっている温泉旅館もありますが、果たして街全体ではどうか?やはり、一体となって温泉街全体としての魅力を高めないと(例え名所旧跡が無くとも、そぞろ歩きが楽しい街にしないと)ダメなのではないかと感じました。信州の温泉地も個々には魅力のある温泉や、飲食店、自然などのスポットはありますので、それを如何に連携・連動させてエリア一体となった魅力創りを以て、先ずは若者向けに発信する・・・。若い人が来れば、ヤングファミリーも来る。やがて家族連れも来る・・・。年寄りたちもワンコもついて来る・・・。
山中温泉を歩いてみて、今観光で若い人たちが多いという熱海と何となく似た印象がしました。
 夕方、ワンコたちを部屋において、紅葉のライトアップがされるという鶴仙渓の遊歩道をもう一度歩いてみることにしました。
こうろぎ橋から大聖寺川の川沿いの遊歩道を歩きます。木製の「こうろぎ橋」から渓谷に沿って、草月流の家元がデザインしたという現代風の「あやとり橋」まで歩いてみましたが、熊騒動のせいか、歩いている人はあまり居ませんでした(確かに、毎朝熊注意を呼び掛ける拡声器での町内放送や、ホテルのフロントでも早朝の渓谷や山間の散策は控える様にとの注意はありましたが・・・)。そのため、散歩を希望した奥さまは、何か音がする度に、
 「ク、熊じゃないよね!?」
と怖がるので、せっかくの景観を楽しみながら散策する気分には全くなれませんでした(・・・トホホ・・・)。