カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 さて、今回の旅先でのグルメ。11月の北陸といえばカニ、かに、蟹でしょうか。松葉ガニ、越前ガニ、加能ガニ・・・呼び名は違えど、いずれもズワイガニ。
以前鳥取で本場の松葉ガニをフルコースで頂いたこともありますが、山陰や北陸など、本場の地元で食べても高くて高くて、決して庶民の味ではありません。お土産に鳥取の観光客用の蟹売り場で一杯1万円以上の松葉ガニを買おうかどうしようかと迷っていた時に、たまたま店舗棟の裏のトイレに行ったらベンツばかりが停まっていて興覚めしてしまい、蟹を買うのが何だかバカバカしくなって結局買わずに帰ったことがありました。

 以前、金沢の人に聞いたら、客呼びの時や贈答で贈る以外は、地元の人たちもズワイガニは高いので買わないとのこと。家庭での冬の楽しみは、香箱ガニと呼ぶズワイガニの雌。地方によってはセイコガニとも呼ばれていますが、オスに比べて一回りも二回りも小さいので、上海ガニ同様、身より内子と呼ぶ蟹味噌と外子と呼ばれる卵を楽しんだり、或いは蟹汁にする様に出汁を楽んだりするカニなのだとか。しかし小ぶりの分ズワイガニよりもむしろ味は濃厚で、一杯優に1万円はする雄に対し、小ぶりの雌は千円ちょっと。香箱ガニで外子と呼ばれる卵を楽しめるのも、勿論雌だからこそ。そのため、香箱ガニが冬の北陸の云わば家庭の味なのだそうです。

 今回滞在する山中温泉のドッグヴィラはキッチン付きなので、海無し県から行った身としては、鍋や刺身で楽しめるような鮮魚、出来ればその地方でしか食べられないような地魚を買おうと思っていました。
北陸道で山中温泉へ行くまでに、途中漁港などに立ち寄らずに北陸道から直行する予定でしたので、山中温泉へは金沢方面からは手前の片山津ICからの方が早いのかもしれませんが、加賀ICのすぐ近くに海産物センターがあるとのことから、加賀ICで降りて寄っていくことにしました。
そこは地元の水産店が営業している海産物センターでしたが、ICから300mと降りてすぐ。佃煮や干物などのお土産用の海産物以外は、残念ながら鮮魚は無く、蟹のみ。お店の人に話を伺うと、出汁を取るならと香箱ガニを勧められ、しかも一般に並んでいる茹でたモノではなく、生が一番とのこと。そこで、2杯生の香箱ガニを選んでいただきました。そこは蟹専門の船元が営む水産業者の直売所だそうで、結構大きめの香箱ガニ一杯が1,200円。普通なら(他店では)1500円とのことでしたが、後で近江市場に並んでいた茹でた香箱ガニを見ると、生でそのサイズなら実際に納得の値段と大きさでした。先ずは、生のまま水から茹でるのが肝心とのことでした。茹で方の他にも、剥き方、食べ方など色々と教えていただきました。
 そこで山中温泉の地場のスーパーに行って、白菜や、キノコなど鍋材料を購入し、早速カニ鍋にしてみました。ポン酢で頂いた後、最後に〆は卵でとじて定番のカニ雑炊です。
先ずは、教えていただいた通りに裏返して外子の部分を外し、甲羅を向きます。足はズワイに比べれば細いのですが、ハサミを入れて身を取り出します。
奥さまも、香箱ガニは外子がとりわけ美味しいと気に入ったご様子。いつもは面倒臭がって蟹の足を余り喜ばない家内も、残した足も全部剥いてあげたら喜んで残さず食べていました。個人的には、むしろカニ雑炊の方が美味でした。カニだけですが確かに良い出汁が出ています。勿論、雑炊前の白菜や春菊、春雨もポン酢で美味しくいただきました。
野菜や調味料を含めても二人で3000円足らずの香箱ガニのカニ鍋。家庭で楽しむなら十分過ぎる程の満足感。コスパも含め、こんな冬の味覚を普通に楽しめる北陸山陰の方々は(大雪の対応は実に大変で、屏風の様な北アルプスが北陸に湿った雪を降らせ、お陰で山向こうの松本地方の私たちは雪に苦しまずに暮らしていけるのですが、海無し県の我々信州人から見て)何とも羨ましい限りでした。
 さてカニについて飽くまで個人的な感想で恐縮ですが、今まで食べたカニ料理で私メが一番美味しいと思ったのは、シンガポールのブラックペッパークラブでした。シンガポール名物のチリクラブよりも、カニそのものを楽しむのなら絶対にお薦め。当時定番で良く行ったチャンギ空港近くのシーフードセンターでは、チリクラブは食べ辛い(手が汚れる)こともあり、身の方はゲストの方に任せて我々現地赴任者は専らパン(揚げパン)にソースを付けて食べていました。
市内には勿論高級店もありましたが、ブラックペッパークラブは家のすぐ近くにあったニュートンサーカスのホーカーセンターと呼ばれる屋台街の中の中華料理の安い屋台(味は一級品で、馴染み客になれば良心的)から他の幾つかのメニューと一緒にテイクアウトして来て(屋台街は屋外で、蚊が多いので)、いつも家で食べていました。
東南アジア地方で食べられているカニは、現地ではマッドクラブと呼ばれていましたが、日本でいうガザミ(ワタリガニ)の一種で大型のノコギリガザミだそうです。甲羅だけで優に掌大はありそうな大きなカニでした。ズワイガニ等に比べると大味とのことで、そのため東南アジアではチリソースや黒コショウでスパイシーな味付けがされる様ですが、食べ応えがありました。一方、蟹味噌は淡水蟹である上海ガニ(モクズガニの一種)が一番かもしれません。あの半熟卵の様なねっとりした濃厚さは、他の蟹味噌とはちょっと違う様な気がします。
ただ、チリクラブや上海ガニがどんなに美味しくても、日本でしか楽しめない“蟹料理”は何と言ってもカニの甲羅酒ではないでしょうか。その甲羅酒もズワイガニではなく、小さめの甲羅の香箱ガニを使う筈。そういう意味でも、香箱ガニは庶民の蟹として親しまれているのかもしれません。
因みに、鳥取で地元の方に甲羅酒よりお薦めと教えてもらったのは、蟹の甲羅か焼きガニに使った足か、焦げる程に炙った殻を砕いてフグのひれ酒風に飲む方法。甲羅酒よりも香ばしくて美味しかったのを覚えています。(個人的には、フグのひれ酒よりもイワナの骨酒の方がお薦めですが、その時一度しか飲んでいないので、骨酒との比較は分かりません)。