カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 9月中旬から1ヶ月ほど、房を付け過ぎて余ってしまった巨峰を近所のスーパーの地場産品コーナーへ連日出荷していました。
ブドウは、リンゴと違い採り置きが出来ないため、朝採りした巨峰を一房ずつ包装して出荷します。休日はともかく、平日は出勤前に終わらせないといけないので、チロルの散歩は暗い内に終わらせて、明けるのと同時に収穫していました。地場産品コーナーのスペースの関係(野菜・果物など遠くからわざわざ出荷される方もいて競合も激しいので、余り一人で占有しないように)で、一日10房程度しか置けませんでしたが、ほぼ完売していました。

 そんな10月のある日、休日で昼過ぎには売り切れていたので途中補充していると、お年を召されたお婆ちゃまが「これちょうだい!」と言われ、一番値付けが高くて大きな房を買い物篭に入れられて曰く、「毎日お宅のブドウ買(こ)うてますねん。色々比べたけどお宅の巨峰食べたら甘くて、他のは“よう”食べられへん。」
こちらもつられて「はぁ、おおきに・・・。」
「今度、大阪に帰るんやけど、ご近所に配りたいので送ってくれへん?」(お話によると、結婚して松本にお住いの娘さんの所に数週間滞在されていたとのこと)
 残念ながら、もう巨峰のシーズンも終わりで熟し過ぎに近く、宅配便でお送りすると粒が房からもげる心配があるためお断りさせていただきました。すると、「そしたら、自分で持って行くさかい、持てるようにして家まで届けてくれへん?」・・・とのことで、お帰りになられるという朝、箱詰めして手にもてるよう取っ手を付けて、それまで毎日のように買っていただいたという御礼のご自宅用と併せて(朝早く出勤した私の代わりに家内が)お届けしました。

 所用で東京に行くために、たまたまお休みをいただいた11月6日の金曜日、朝8時頃だったでしょうか?チャイムが鳴り、チロルをケージに入れている間に家内が応対に出ると、かのお婆ちゃまが立っていらっしゃいました。
 巨峰は無事大阪まで持って行かれたとのことで安心しました。しかも、箱だけではなくご自宅用も一緒に無理して持って帰られたそうで、今回1ヶ月振りにまた松本の娘さんの所に「静養」(松本の美味しい空気と新鮮な野菜や果物、そして景色から元気を貰うのだとか)に来られて数週間滞在されるとのこと。そして、大阪からわざわざお土産を持ってきていただいたのでした。
「もう、ご近所に配ったら喜んでもろうて、もっと高(たこ)う売らなあきまへん。今度はリンゴも注文するさかい!」と。

 こちらはただ買っていただいただけですのに、ブドウやリンゴを通じて見ず知らずの人との繋がりが出来ていく。何だか不思議な気持ちです。生産者冥利に尽きるということなのでしょう。
「ほな、また!」と、お年には見えぬほど颯爽と帰られた“大阪のオバチャン”をお見送りしながら、大阪から一緒に運んで来ていただいた「ほんわか」した暖かな余韻に、暫く家内と二人で浸っていました。「・・・毎度おおきに!」