カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 ハーモニーメイト向けに隔月で送られてくる、タブロイド版の情報誌「Harmony」。今回の特集は、来る10月13日にザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール、略して“音文”)で演奏を行う上岡敏之指揮ヴッパタール交響楽団。

 その紹介記事によれば、音楽マネジメント会社から送られてきた、2007年の初来日公演のDVDを見た音文スタッフが感激し、松本でも是非演奏してもらいたいと企画し実現した演奏会とのこと(確かに今回のツアーで、地方都市は松本と倉敷のみです)。
そして興味があれば、そのDVDを何と貸し出していただける!と書かれているではありませんか。「えっ、本当?」と訝りつつも電話をすると、メイト会員とは言え、見ず知らずの私に「ええ、どうぞ、どうぞ。是非聴いてみてください!」とのありがたい(≒ある意味信じられない)お返事。早速音文の事務所に伺って(身分証明等確認することもなく)お借りして来ました(松本ってイイ街でしょっ!)。

 それは、2007年10月11日に東京オペラシティで行われた、手兵ドイツ・ヴッパタール交響楽団を率いての初来日公演での、チャイコフスキーの第6番『悲愴』の演奏。因みにこの日は、彼自身がモーツァルトの23番を弾き振りしたようです(彼のモーツアルトも聴きたかったなぁ)。

 いや、確かに凄い。久し振りに感動しました(第194話の金聖響&OEK以来かな)。宇野功芳氏の絶賛もあながち誇張ではないかもしれません。
余談ながら、以前朝日新聞のGLOBEでの紹介(第312話参照)で、彼を評して楽団員が「跳躍的」と言っている意味が良く分かりました。
なお、この時の「悲愴」の演奏は、第3・4楽章を間髪入れずに続けて演奏しています。金管にやや乱れはあるものの名演です。勿論指揮は暗譜。

 演奏が終了しても、感動の余りステージ前に詰め掛けて「帰れず」に拍手を送り続けるその日の“幸せな聴衆”と、何度となく繰り返されたカーテンコールの後一旦引き上げながら、聴衆に応え、マエストロと一緒にまたステージ上に引き返して最後一緒に全員で日本的に深々と一礼する楽団員たち。
演奏中とは別人のようなハニカミ屋のマエストロと彼らとの信頼感(演奏中にマエストロを見つめる彼らの目からもそれは伺われます)が伝わってくるようでした。いいなぁ、これ。
東京芸大指揮科出身ながらコンクールとは一切無縁で、ドイツの歌劇場での練習用伴奏者からの叩き上げという異色の経歴を持つ彼は、因みに(GLOBEによれば)地元では「ヴッパタールの宝物」と敬愛されているそうです。

 記事によれば、今回の来日公演は「オール・ワーグナー・プログラム」のところ、松本公演だけ特別にお願いして「英雄」(及び、チャイコのVn.協奏曲。ソリストは、94年チャイコフスキー・コンクール最高位のアナスタシア・チェボタリョーワ。今回はこの松本での1曲だけのための来日とか)にしていただいたのだとか。(個人的には上岡氏の弾き振りで、モーツァルトの20番か23番が良かったのですが・・・。きっと「悲愴」を聴いて、どうしてもチャイコフスキーもプログラムに入れたかったのでしょうね)

 去る4月3日に行われた新日フィルへの客演(メインはメンデルスゾーンの6番「宗教改革」)後のインタビューで、アルプスに抱かれた楽都「松本はドイツの地方都市に似ているので、日本での“我家”に帰ったような演奏ができれば」という上岡氏自身のメッセージと共に、我々自身も(現在開催中のSKFとは無縁の私メは)今から当日の公演がとても楽しみです。
その日も、DVDのように帰ることを忘れるほど“幸せな聴衆”になれることを祈っています。

 初めて松本を訪れる彼らを歓迎すべく、当日北アルプスの山々が見えるとイイですね。