カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 題名をご覧になって『取り立てて言うほどのことではない!』と、読者の方からお叱りを受けそうですが悪しからずご了承ください。

 海外赴任して、自分の大和民族の血を再認識し、(情け無くも)味噌汁だとか卵かけご飯だとか、とにかく日本的なモノが食べたくて、且つ懐かしく感じられるようになりました。
お酒で言えば、最初は日本では飲めないような高級ブランデーに狂喜乱舞していたのが、その内すっかり日本酒の虜になり、涙ながらに全巻読破した『夏子の酒』をバイブルに、日本酒の知識を吸収したのもこの頃でした。
自身は専ら冷酒党で、しかも晩酌とは言ってもお猪口一杯が適量(と誰かの視線を感じつつ、自分に言い聞かせるようにしています)。

 私の子供の頃の地元松本のオヤジサン(おじいさん?)達の晩酌銘柄と言えば「岩波」だったでしょうか?また、灘や伏見が甘口一辺倒だった学生時代は、当時少なかった辛口で定評の池田町の「大雪渓」をわざわざ京都まで担いでいったこともありました。

 社会人となり、日本酒党の上司から熱燗の注ぎ方(カチンと当ててピタっと止める)から全国地酒番付までを指導・伝授され、更に日本酒好きに磨きが掛かり、その後有名/評判には関係なく(「夏子の酒」の影響で、ナショナルブランドの大手銘柄には一切目もくれず)自分にとって本当に美味しい地酒を「あれでもない、これでもない」と探してきました。
個人的には、本来は品評会出品用の(且つ高価な)大吟醸とか言うよりも、むしろ純米酒の方が好みなのですが、今でも好きなのは地元松本の「大信州」。とても真面目なお酒です。
同じく池田町の大雪渓とは別の酒蔵である福源酒造(お隣の奥様のご実家)の「北アルプス」。特に(中々手に入らないのですが)無濾過純米は本当にイイお酒です。この二つがこれまでの私の定番でした。
その後、舞姫酒造の「翠露」を知り、何度か試して、またちょっと浮気した結果、やっぱり翠露の純米に戻りました。
それは、第75話でご紹介した『純米吟醸中取り生酒美山錦(15.3度)。精米歩合49%、日本酒度+2のお酒。4合瓶で1400円也。
通常精米歩合60%以下が吟醸、50%以下は大吟醸の分類となっていますので、基準では大吟醸と名乗ってもいい筈ですが、信州人らしく?“クソ真面目”なのか、或いは孤高の諏訪人のプライド?か、「純米吟醸」として販売しており、1400円(1.8リットル2800円)は破格と言ってもいいくらいです。そして日本酒度+2ですが決して甘口ではなく、上諏訪の某割烹ではむしろ「辛口」としてリストに記載されていましたが、スッキリしていて甘辛というより「旨口」と言っていいくらいに感じます。私がこの印象を受けたのは、その旨味の種類はそれぞれ異なりますが、これまで「万寿」と「岩魚の骨酒」だけでした。

 現在、舞姫酒造は再建途上。
以前の倒産報道に拠れば、経営難の原因は「原料にお金をかけ過ぎたため」だとか。確かに本当はもっと高く売っても良いくらいかも知れません。
決して同情などではなく、諏訪の蔵のそうした「心意気」を感じつつ、日本酒党としては、この「旨口」のお酒をこれからもずっと飲み続けられるように、せめて私にとっての晩酌銘柄の定番として応援できたらと思います。

 皆さんも一度お試しあれ!旨い酒です。