カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 長野県松本文化会館(ネーミングライツによりキッセイ文化ホール。地元での愛称は、“ザ・ハーモニーホール”松本市音楽文化ホールが“音文”に対して“県文”ですが、“県文”は他に長野と飯田にもあります)。
サイトウキネン音楽祭(現OMF)の主会場としてもお馴染ですが、こちらでは定期的に落語も行なわれています。それも、二ツ目の噺家さんによる寄席。題して「あしたは真打-まつぶん新人寄席」。
松本では「松本落語会」という地方寄席としては老舗の落語会が業界でも有名なのだそうで、昨年の「NHK新人落語大賞」で準優勝だった柳亭小痴楽さんが高座に上がられると知り聞きに行きましたが、「まつぶん新人寄席」も年3回程なのでしょうか、二ツ目の噺家さんばかりが演じられる高座で、今回で既に16回目になるのだとか。
今回は、春風亭一左(いっさ)さんと古今亭志ん松(しんまつ)のお二人。
 会場は県文の国際会議室で、チケット(木戸銭)1000円で200席とのこと。地方では生落語を聞くことが出来る機会は少ないので、八割方埋まったでしょうか。客層は、私メも含めてお年寄りや年配者の皆さんが中心。
ステージに寄席らしく高座が設えられ、お囃子が流れる中、先ずは春風亭一左さんが「幇間腹(たいこばら)」、古今亭志ん松さんが「あくび指南」。お仲入りの後、古今亭志ん松さんが「庭蟹(洒落番頭)」。トリに春風亭一左さんの「粗忽の釘」という演目でした。
 「幇間腹(たいこばら)」は、俄仕込みの鍼に凝った若旦那が幇間に鍼を打つ噺。幇間は“幇間持ち(たいこもち)”という言葉で今も残りますが、今や(日本に?)3人しか(しかも平均年齢82歳とか)居ない“絶滅危惧種”の職種とか。この噺は「どうらく息子」で銅ら治が演じて知りました。実際の音として聞くのは初めてです。
「あくび指南」は、これまで習い事が一つもモノにならなかった八っつぁんが「あくび」の仕方を教える先生に習う噺。有名な古典落語でCDで聞いています。
「庭蟹(洒落番頭)」は初めて聞く噺で、洒落が上手だと評判の番頭さんの洒落を理解出来ないクソ真面目な旦那さんの噺でしたが、調べて見ると「シャレ」の小噺を続けるため時間調整などに使われる「逃げ話」と云われ、あまり演じられることが無い珍しい噺なのだそうです。
最後の演目は、名人小さん師匠で何度か(CDで)聞いた有名な「粗忽の釘」。元々は上方落語の「宿替え」。一左さんの噺は、引越しの夫婦の「行水」の様子など、小さん師匠とは違う艶っぽい内容で、なかなかの熱演でした。ナルホド、こういう「粗忽の釘」もあるのかと大変感心しました。さすがトリで、会場も大いに盛り上がりました。春風亭一左さんは声に張りがあり噺ぶりも賑やか(精進すれば、いずれ“華やか”になるでしょう)で、「あしたは真打ち」ではありませんが、将来が大いに期待出来そうです。
やはり落語は、噺だけではなく“顔芸”などの表情や例えば扇子を使った煙管(キセル)などの仕草一つとっても、噺と仕草を併せた総合芸術であり、音源のCDだけではやはり本当の面白さは分からないのだと(今回で生落語は漸く3回目)痛感した次第です。

 たまたま、ビッコミオリジナルの「どうらく息子」の最新号も「粗忽の釘」で、最新号では「粗忽の釘」を演じて見事NHK新人落語大賞を取る「加賀屋ありす」の噺。その噺の稽古を付けてもらった憧れの「惜春亭志ん銅」師匠の件に煙管の使い方があり、今回もナルホドと感心して聞いていました(内容は違えど、煙管一つとってもその芸の細かさを、一左さんも見事に演じておられた様に感じました)。

 余談ですが、学生とシニア(60歳以上)は500円だとか。一般1000円でも十分に安いのですが、次回からはシニア価格のワンコインで聞かせていただきます。次回17回は1月28日とのこと。