カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松本中央図書館で借りる古典落語のCD。
何度かご紹介した「どうらく息子」を読んで、ストーリーに出て来る古典落語をちゃんと聴いてみよう思ったのがきっかけです。
先ずは「芝浜」と「文七元結」を聴こうと思い、借りたCDが「落語教養高座 江戸大百科」(第951話参照)。全部で30巻近い古典落語のシリーズで、その後もコーナーにあるCDを次々と借りて全部聞いてみました。

残念ながら新しいものは殆ど無く、志ん生や米朝、小さん、圓生などの昔の名人中心(借り手の想定がご老人なのでしょうか?落語のコーナーの横には、広沢虎造の浪曲選も)。名人芸でも、モノラル録音が多いのが玉に傷。これだと折角の話芸も音が悪くてなかなか聞き取れません。
それにしても、やはり小さん師匠の名人芸。枕で「~ですな」と、語尾をちょっと上げる語り口に得も言われぬ味がありますな(♪)。
「禁酒番屋」で、次第に酔いがまわっていく番屋役人の様子や「たぬき」など、さすがの人間国宝です。因みに小さん師匠は、一応長野市生まれで、二・二六事件に(何も知らされずに、反乱部隊所属の二等兵として上官の命令に従い)出動していたとか(大昔、TVで語っておられた記憶があります)。

 そんな落語のCDコーナーの中に、名人志ん生の次男である古今亭志ん朝師匠のCDが2枚だけあったので借りて聞いてみて驚きました(「愛宕山」と「宿屋の富」、「居残り佐平次」と「雛鍔」がそれぞれカップリング)。
声の張り、江戸弁のキレと気風の良さ、(有り得ない噺だからこそ、誰もが汗だくで演じるという「愛宕山」では、途中話が無く、おそらく動作だけでの)客席の沸き方からも伺い知れる芸の巧みさ・・・。
落語に留まらず、売れっ子だっただけにTVにも登場していましたし、落語もTVで視た記憶はあるのですが、当時は落語の深さも面白さも知りませんでしたので、記憶に残ってはいません。2001年に61歳という若さで急逝されたそうですが、残された音源を聴くと、今更ながらに「旨いなぁ・・・」と溜息が出て来ます。辛辣な立川談志が、「金を払ってでも聴く価値があるのは志ん朝だけ」と評価していたそうですが、ナルホドと思います。今更ながら、惜しいなぁ・・・。

 一方、以前「紺屋高尾は談志を聴くべし」と本ブログへのコメントで教えていただいたので、図書館で探してみたのですが、権威に盾突いての反権力故に公共図書館としての購入は憚られたのか、何故か談志師匠のCDは見当たりません。
その後も、「どうらく息子」に登場してくる噺を主体に、古典落語のCDをほぼ毎週借りていたら、先日初めて立川談志師匠のベストと冠した2枚組のCDを棚に発見。早速借りてみました。入っていた中で、師匠らしい毒舌・辛辣な枕はともかく(あまり好みではありません)、古典落語のテンポの良さはさすが。特にCDに収められた「二階ぞめき」(注記:ぞめく=冷やかす)と迫真の「らくだ」(完演版とのこと)に感服。上手いなぁ・・・。
・・・ということで、志ん朝と談志の両師匠がもし今も元気だったら、平成の大名人として(上方ではさしずめ枝雀さんでしょうか)競い合っていたでしょうに。みんな、ホント惜しいなぁ・・・。
 因みに“昭和の爆笑王”三平師匠も1枚だけあったので借りてみましたが、生で聴いたら印象も変わるのかもしれませんが、録音では感心せず。
また、変わったところでは、ANAの機内サービス用(昔、海外赴任中などで搭乗した日系航空会社ではリストに必ず落語もあり、こんなの聞く人がいるのか?と訝しがった記憶がありますが、今なら納得です)の「笑う全日空寄席」に入っていた三遊亭歌之介師匠の「寿の春」。師匠の出身地、鹿児島弁による爆笑創作落語と、「笑点」でもお馴染みの林家たい平師匠の幽霊噺「不動坊」。これは真打昇進6日目に収録された高座とか。若手(今や中堅ですが)も頑張っています。そして、一枚だけあった柳家さん喬師匠の「抜け雀」と「五人廻し」のCD。初めて聴きましたが、いや、巧い。メリハリがあり、気品と色気を感じさせます。人気噺家の一人でもある柳家喬太郎師匠がさん喬師匠のお弟子さんで、さん喬師匠ご自身は小さん門下だそうです。また、そのさん喬師匠と長年に亘って二人会を行っている“寄席の爆笑王”柳家権太楼師匠のCDも2枚。「二人共旨い!」(CDで、新しいのはせいぜいこの程度)。
まだ、上方落語までは行きつけておりません。西の人間国宝、故米朝師匠に辿り着くのはいつになることやら・・・。

 因みに、最近は“落語ブーム”なのだとか。
私メが落語の面白さを知ったのは、何度かご紹介した尾瀬あきら作「どうらく息子」ですので、5年ほど前。地方にいると機会の少ない“生落語”でもお客さんは私も含め中高年ばかりでしたが、都会では今や若者が落語を聞きに“押し寄せている”(オーヴァーに云えば)のだとか。ブームか否かの真偽はともかく(この辺は後日改めて触れるとして)、一方で噺家さんが東西合わせて800名とかで、この数は全盛期(?)の(今と比べ娯楽が少なかった)江戸時代に匹敵するのだとか(ナルホド!)。但し、江戸時代には40席あったという寄席は、今や東京に僅か3軒のみだそうですが・・・。
どうぞ、皆さんも一度(TVやCDで)落語を聞かれてみては如何でしょうか。