カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 後輩に「飲みに行きましょう!」と誘われ、このところ松本ばかりで諏訪での飲み会が無かったので、「だったら」と暫く行っていなかった上諏訪の割烹『雫石』へ。

 二人でカウンターに座って、女将さんやマスターと話しながらのひと時。
第481話でご紹介したように、女将さんは釜石のご出身。震災後、二度ほど釜石に帰省して、また来週も行かれるそうです。
故郷の街を襲う津波の映像をTVで見ては号泣していたのが、実際に津波で跡形も無くなった現地を見ても、何だか現実と受け入れられなくて、その場に立つと何故か涙も出なかったのだそうです。
「こうだったんだよぉ!」と女将さんが見せてくれた、自身被災者でもある記者たちが襲い来る津波の中で必死に撮影し執筆したという、地元の新聞社がまとめた震災当日の生々しい写真集(おそらく、先頃発表になった2011新聞協会賞受賞の岩手日報社 写真企画『平成三陸大津波 記者の証言』だと思います)。
きっと女将さんは少しでも現地の実態を知ってもらおうと、店に来るお客さんたちにも見せたのでしょう。既にボロボロになっています。また、これまで店で取り寄せていた釜石の蒲鉾屋さんからは、「全て流されてしまいまいしたが、必ず再開させるのでそれまで待っていてください。」とのハガキが届いたと、嬉しそうに見せてくれました。

 お酒はいつもの諏訪の地酒もありましたが、前回お願いしたようにちゃんと東北の地酒、この日は岩手の銘酒「あさ開」もあったので、迷わずに指名。

 震災後、釜石の妹さんが「震災で、ずっと(生の)お魚を食べてないんだよぉ!」と嘆くのを聞いて、震災までは釜石のご実家から鮮魚を直送してもらっていた「雫石」の女将さんは、早速この諏訪では鮮度が良いと評判の鮮魚売り場でたくさん購入し、保冷便で釜石に送ったのだそうです。

 そうしたら、届いた魚を見た妹さんたちは皆でビックリして、
「久し振りに、みんなで大笑いしたんだよぉ!」
と電話をされてきたのだそうです。
何でも、送られてきた魚の、特に生のイカの鮮度の悪さに驚いたのだとか。
「信州じゃあ、こんなイカを生で食べてるんだねー。姉ちゃんもすっかり“山のヒト”になっちゃたんだねーって、みんなで大笑いしたんだよぉ!」
結局、せっかく女将さんが信州から送った“鮮魚”は、どれも生では食べてもらえずに、煮たり焼いたりされたのだそうです。

「へぇ、そうなんだぁ。」
「あそこでもダメってことは、そんなにヒドイのを日頃僕等は食べてるんだ・・・。」
「でもそのお陰で、久し振りにみんなで笑えたって喜ばれちゃった・・・。」
「ナンだか信州人としては複雑だけど、でもみんなに笑ってもらえて良かったジャン・・・!?」

 この日は、酢で〆た自家製のコハダと焼いた新さんまに、古漬けっぽくなりかけた女将さんお手製の糠漬けのキュウリ(絶品でお代わりしました)と、マスターからお酒には一番合うと薦めていただいた、ワタも一緒のスルメイカの丸干し。
辛口でキレのある「あさ開」の純米と相俟って、「山のヒト」にはどれも絶品だったんですけどぉー!